マインドフルネスの始まり
企業での実践や、心と体の治療など、さまざまな方面で活用されているマインドフルネス。
マインドフルネスは、近年になりますます広がりを見せていますが、実はその教え自体は、かなり昔から存在していました。
ここでは、マインドフルネスの発祥について学びます。

アメリカで生まれた「マインドフルネス」
「マインドフルネス」という言葉を聞いてピンと来る人もいるかもしれませんが、この言葉自体は英語です。
このことからもわかるように、「マインドフルネス」という言葉は、アメリカで生まれました。
仏教用語である「サンマ・サティ」という言葉があります。
サンマ・サティは、「常に落ち着いた心の活動・行動」という意味です。
それが英訳されたのが、マインドフルネスです。
つまり、マインドフルネスの元になる考え方はアメリカで生まれたのではなく、もともとは東洋の仏教がベースになっているのです。
ではなぜ、仏教の概念がアメリカで広がったのでしょうか。
それは、アメリカでのキリスト教の衰退が要因の一つのようです。
その代替として、アメリカの人々は、東洋の仏教に関心を抱くようになったといわれています。
ヴィパッサナー瞑想
マインドフルネスの源流となるのは「ヴィパッサナー瞑想」という瞑想方法です。
ヴィパッサナー瞑想は、ブッダから始まり、東南アジアでは今なお続いている瞑想方法です。
ヴィパッサナー瞑想では、自分の気づきをラベリング(心の中で言葉にして認識すること)していきます。
例えば歩く瞑想では、一歩ごとに「右足を運ぶ」「左足を運ぶ」、周りを見回すときは「見ている」と、自分の行動を観察しラベリングをしていきます。
言語にして明確化するこのトレーニングで、問題を認識し、解放することができるのです。
このラベリングの作業は、マインドフルネスの実践でも活用されています。

医療分野で広がる
仏教の瞑想を医療の分野に取り入れたのは、マサチューセッツ工科大学のジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)博士です。
1979年、カバットジン博士は、マサチューセッツ大学の医学部に、マインドフルネスストレス低減プログラムを実施するセンターを開設しました。
開設当初は、医学的治療が困難な病の治療からスタートしましたが、徐々に分野を広げ、心理療法にも適用されるようになりました。

カバットジン博士自身、長年に渡り日本文化から大きな影響を受け、日本人に禅を教わったことを公言しています。
博士は、瞑想の世界を探求した結果、瞑想による効果は東洋人だけではなく、西洋人にも通じるものがあると確信しました。
もともとは仏教の教えからはじまったものですので、宗教色が強いというのが現実でした。
しかし、カバットジン博士は、
「ブッダは人間の悩みを解決するために修行をしていた人物であるから、その教えは仏教徒のためだけではなく、宗教や国境を超えた万人のためのものである」と考えました。
そこで、伝統的な仏教の考え方を現代的にアレンジし、マインドフルネスのプログラムとして医療の分野に取り入れたのです。
つまり、東洋の世界で発展した仏教の教えが、アメリカに渡って心理療法の分野で「マインドフルネス」として発展し、それが今度は世界中に広がっているのです。
今回のページではマインドフルネスのルーツについて掘り下げて学びました。
もともと仏教の教えだというのはなんとも感慨深い内容だったことと思います。
次回のページからは、少し内容を変えてマインドフルネスの効果についてお伝えしていきます。