歩く瞑想
マインドフルネス瞑想には、ただじっと座って呼吸に集中する「座る瞑想」や「ボディー・スキャン瞑想」の他にも、さまざまな瞑想方法があります。
今回はその中でも、「歩く瞑想」について学びましょう。

「歩く」という体験を心と体で感じる
生活の中の一瞬一瞬に注意を向けるトレーニングとしては、まずは歩く瞑想がおすすめです。
突然ですが、皆さんは、どのような理由で歩きますか?
散歩するためですか?
それとも、どこかへ行くためでしょうか?
いずれの理由にしても、歩くときはどんなことを考えていますか。
目的地のこと、今日のスケジュールのこと、楽しかったこと、つらかったことなどいろいろなことを考えいますよね。
歩いているにもかかわらず、歩いている”今この瞬間”に注意を向けることはないでしょう。
それはなぜでしょうか。
それは、呼吸と同じように、「歩く」という行動は、とても当たり前のことだからです。
自分が歩けることに、感謝などしようとも思いません。
しかし、事故などで怪我をして、歩けるようになるために毎日リハビリをすることを想像してみてください。
または、もう一生歩けなくなってしまったことを想像してみてください。
そうなったときには、「歩く」ということ、「大地を一歩を踏み出す」ということは、奇跡ではありませんか。
人は、そんな奇跡を、毎日体験しているのです。
しかし、多くの人にとって「歩く」ということは当たり前すぎて、感謝することもなく過ごしてしまっています。
「歩く瞑想」では、この奇跡的な体験に注意を向けてみましょう。
「歩く瞑想」の準備
場所
場所は、自分が瞑想しやすい場所を選んでください。
かなりゆっくりと歩く瞑想をしたいときなどは、周囲の目が気になると集中の妨げになりますので、自宅でおこなうこともできます。
人の少ないところや静かな場所など、深く瞑想できる場所を見つけておきましょう。
速度
歩く速さは、どの速さでもかまいません。
ゆっくり歩くと、一つ一つの動作に集中しやすくなります。
速く歩くと、足の動きの一つ一つに集中することはできませんが、代わりに全身の動きに集中できます。
集中を深めたいときや、初めておこなうときは、ゆっくりした速度からはじめてみましょう。
集中できるようになったら速度を速めて、体全体の動きに集中するトレーニングもおこなってください。
視線
歩く瞑想をおこなうときは、移り変わる景色を見ないようにして、前方に視線を固定します。
景色を眺めながら歩くと、「歩く」ことに集中できません。
さあ、歩く瞑想を始めよう
準備が整ったら、始めましょう。
“今この場所”に自分が存在していることを感じてください。
そして、足の裏に注意を向けましょう。
足の裏が地面に着いているのを感じてください。
片方の足が地面から離れ、そして地面に着き、体重がかかります。
そのとき、もう片方の足が地面から離れます。
そして、前の方に動き、地面に着いて体重がかかります。
この両足の動きを、ゆっくりと味わってみましょう。
「歩く瞑想」を始めると、座る瞑想のときと同様に、雑念がわいてくるのがわかります。
「歩く」ことから注意がそれ、心が別の場所にさまよい出したら、それに気がついてください。
そして、また歩くことに注意を向けてください。
耳に入ってくる「音」や、視界に入ってくる「モノ」に対して何か感情や思いがわいてきたら、それに気がつきましょう。
そして、また歩くことに注意を向けてください。
集中力を保つコツ
はじめのころは、集中力を保つために注意を集中する部分を一カ所に決めてください。
足の「つま先」「かかと」など、歩いている間じゅう、その一点に注意を集中させてください。
足の動きと感覚を、「右足上がる」「右足着く」「左足上がる」「左足着く」と心の中で言葉にする方法もあります。
この作業を「ラベリング」と言いますが、ラベリングについてはもう少し後でしっかり学びます。

「歩く瞑想」に慣れてきたら
歩く瞑想をおこなうと、この瞑想は日常でもできることに気がつきます。
例えば、駅まで歩くとき、散歩をするとき、家を出てから車に乗るまでの短い時間でさえ、歩くことに注意を向けることができます。
何かに追われ、気持ちが急いているとき、人は自然に早歩きになってしまいます。
そんなときは、意識してゆっくり歩き、「歩く」ことに注意を向けてみてください。
歩いている一瞬一瞬に、入り込むのです。
歩きたくないのに、歩かざるを得ない日もあるかもしれません。
電車やバスが遅延になった、家族に車で送ってもらえなかった、など、理由はさまざまです。
そんな日も、いやいや歩くのではなく、ただ歩くことに注意を向けてみてください。
「歩く」という、これまでは自動的に、機械的におこなわれていた行動に意識を集中することによって、
何かに急かされて単調にこなしていた日常が、”今この瞬間”を体験できるすばらしいものにかわります。