サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)
マインドフルネスは、多くの企業に導入されています。
有名な企業では、グーグル、ヤフー、ゴールドマン・サックス、アップルなどがあり、他にも多くの世界的企業が社内で実践をしています。
その中でもグーグルは、社内で独自のマインドフルネスプログラムを開発して実践し、注目を集めました。
そしてそのプログラムは、今では他の企業にも導入されています。
そのプログラムを「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)」と言います。
マインドフルネスが企業に導入され、成功を収めた例として、
今回はこの「サーチ・インサイド・ユアセルフ」についてお伝えします。

グーグル独自のプログラム
グーグルの社内や、グーグル社員をイメージするとき、どのようなことを思い浮かべますか。
自由な雰囲気の社内で、才能とアイデアの溢れたすばらしい社員が生き生きと楽しく働いている…。
そんなイメージが思い浮かびますよね。
どうしてグーグルは、継続してすばらしい成果を出すことができるのでしょうか。
それには、グーグルの社員が開発した、サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)も大きく貢献しているようです。
SIYは、グーグルのエンジニアである「チャディー・メン・タン(Chade-Meng Tan)」が、マインドフルネスに基づくEQの育成プログラムとして開発したものです。
開発には、EQを社会に広めたダニエル・ゴールマン博士、
マインドフルネスを西洋社会に広めた第一人者であるジョン・カバット・ジン博士、
そして禅師など、各方面で活躍する人の協力を得ています。
SIYの目的
チャディー・メン・タン氏は、グーグルでエンジニアとして大成功をおさめたあと、
彼の人生の目標として「世界平和のお膳立てをするために」SIYを開発したと発言しています。
グーグルという一つの会社でSIYを実践してその効果を証明し、そして世界中の人が利用できるように開発したのです。
SIYはこれからの社会で生き抜くために不可欠なEQを、マインドフルネスに基づき高めていくプログラムです。
EQが向上することで、仕事の処理能力や、人間関係、リーダーシップを高める効果が期待できます。
SIYのプログラム
SIYのプログラムの多くは、これまで学んだマインドフルネス瞑想と同じです。
呼吸に集中するマインドフルネス瞑想をはじめ、歩く瞑想など日常生活で実践できる瞑想が取り入れられています。
ボディー・スキャンや書く瞑想(ジャーナリング)なども組み込まれています。
SIYの良い点は、EQを向上するために考えらえれているので、
「目的」と「その目的を達成するためのトレーニング」が
わかりやすくまとめられているところです。
例えば、
- 「自己査定したい」→「書く瞑想(ジャーナリング)」
- 「社会生活・対人関係を向上させたい」→「マインドフル・リスニング(※1)」
- 「自分の情動を自覚したい」→「ボディー・スキャン(※2)」
などです。
マインドフルネス瞑想は目的をもってするものではなく、自分を内省したり集中力を高めるものですが、
SIYでは社会生活で役立てるためにマインドフルネスをより具体的に、より直結的にプログラムしているので、
はじめてマインドフルネスに取り組む人にも理解しやすいようになっています。
(※1)マインドフル・リスニングは以降の章で学びます。
(※2)Lesson4-3でボディー・スキャンは痛みに効果が期待できると学びましたが、ボディー・スキャンは自分の情動を知るのにも役立ちます。また、どれぐらい効果があるか、瞑想中に何を感じるかは、人によって異なります。
SIYを受けた社員の変化
グーグルでは、2007年よりSIYを社員に教えています。
チャディー・メン・タン氏によると、SIYを受けた社員のうち、その多くは仕事とプライベートが変わり、そして人生が変わったと述べていると言われています。

仕事面では、SIYに取り組んだことで、
顧客の信頼度を得ることができるようになった社員、
勤務日を減らして少ない時間の中でより多くの業績を上げることができた社員、
創造性が豊かになった社員などがいたとされています。
プライベートでは、パートナーとうまくいくようになった、
家族の死を乗り越えることができた、
自分のことが好きになった、と述べた社員がいたようです。
SIYをグーグルで実践することにより、マインドフルネスが一般的な人々にも十分効果があると実証されたのです。
今回は、マインドフルネスが企業で実践され効果を得られた例として、グーグルを取り上げて解説しました。
マインドフルネスを取り入れることで生じる、仕事への良い効果もしっかり理解できましたか。
グーグルの実際の例をみることで、より具体的に理解できていることと思います。
次からのLesson6では、組織におけるマインドフルネスの実践についてさらに深く学んでいくことにしましょう。